SO DESIGNが考える、“より少なく、でもより良い住宅”
石田邸を北面から望む
雄大な山々と多くの歴史的な建造物が現存する街、山形県山形市。今回ご紹介させていただくのは、市郊外の田園地帯に佇む〈石田邸〉です。黒塗装を施した杉板張りの外観は、建物南方に広がる蔵王山や水田といった豊かな自然環境と見事に調和しています。
“農家小屋やビニールハウスを連想させるような切妻屋根をベースに、周囲の風景や地域に溶け込むようなデザインをしようと考えました。また、平屋形状で、外壁の杉板を黒く塗装したのも同じ理由です。建物のボリュームを抑えれば、黒特有の「主張しない」という側面が活きて、より周りに馴染むのかなと。おかげでうちを訪ねるお客様からは「どこにありますか?」という電話が100パーセントくるんです。”
そう語るのは、当住宅の設計を手がけられた〈SO DESIGN株式会社〉代表の石田豊様です。ロングライフデザインをテーマに、店舗やカフェを展開する〈D&DEPARTMENT〉からキャリアをスタートされたあと、山形市内の工務店、一級建築士事務所を経て2023年に独立されました。今回の取材では、石田様が目指す“住宅の在り方”や、弊社商品をご採用いただいた理由についてお話を伺いました。
石田邸
1枚目:L字型の住宅は、山形の伝統的な建築形式である曲家(まがりや)を連想させる。大和張りの外壁に使用した1500枚の板は、石田様が自ら黒塗装された。/2-3枚目:アイアン製のフレームが美しい風除室入口の扉。その奥に木製玄関ドアを設置し、二重にすることで気密性を高めている。
かつては農地であった場所に建築された石田邸。広大な敷地の入口には奥様が営む生花店があり、その奥に事務所兼住居がL字型に広がるプランニングをされています。また、外観のポイントとして、雪国ならではの風除室をリデザインされたという石田様。一般的な風除室よりも空間を広く確保したことで、外気の流入や風の吹きつけを緩和するだけでなく、室内の延長として様々な用途での使用を可能にしています。
1-2枚目:床材には北海道産ナラ節無フローリングをご採用いただいた。木と白壁でまとめられた素朴な空間は、日々の暮らしや趣味に没頭できる余白を感じられる。
室内は、玄関と居室をつなぐ16mの長廊下、引き戸に統一された建具、間仕切りのない開放的なリビングダイニング、と全体が緩やかに繋がる動線が印象的です。あえて家の中に“止まり”を設けないことで、空気がよどみなく流動する健康的な住まいが表現されています。
高性能サッシが、雪国の家にもたらすもの
石田邸の特徴として、温熱環境に優れている点も外せません。基礎断熱、壁と屋根の付加断熱といった躯体性能の向上に加えて、高い日射取得率を誇る高性能樹脂サッシのUNILUX IsoPlus(ユニルクス イソプラス)を計16ヶ所にご採用いただきました。
1-2枚目:薪ストーブは、高気密高断熱住宅専用のスキャンサームを採用。南北を貫く窓配置は、南に広がる田園を北面からも取り込むため。「壁のように使えるサッシを探していた」という石田様の言葉が印象的だった。
特筆すべきは、8mにわたってUNILUXを配置したリビングの南面です。採用理由として、大開口、かつ透明度の高いガラスによって雄大な景色を楽しめること、また今回は薪ストーブの導入が関係していることを伺いました。
“薪ストーブって薪の調達や保管の点で、年を取った時のことを考えるとハードルが高いんですよね。でも、住宅の性能が良いと少ない薪で暖が取れるので、UNILUXのような高性能サッシを採用すれば「火のある生活」を長く継続できると思いました。実際にまわりから話を聞くと、我が家は使用本数が少なく済んでいるみたいで。朝と夜に2本ずつ薪をくべるんですが、ストーブからの放熱と(昼間に太陽光を蓄熱した)UNILUXからの放熱があるので、もうそれだけで十分に暖かいんですよ。寒いから薪ストーブをつけるのではなく、室内をもっと快適にしようという感覚でつけています。”
お話を聞いて驚いたのは、冬場に暖房を使用していないこと。躯体性能の向上、そして高性能サッシと薪ストーブの組み合わせによって、冬は豪雪地帯となる山形市においても無断防で快適に過ごせることが証明されています。
より少なく、でもより良い住宅を目指して
取材終盤、石田様が目指す“住宅の在り方”についてお話をしてくださいました。
“私が提案する住宅の根本には「Less but better=より少なく、でもより良く」という考えがあるのかなと。素材を吟味して、より少ない材料で、より良い家を作る。家は日用品なので、作為的なデザインはせず、究極は民家のようにしていけたらと考えていて。そのためには少数精鋭で人件費を最小化しつつ、利益も追求して、(お客様もSO DESIGNも)互いに有益でいられる関係を築いていきたいですね。最終的には質の高い家をリーズナブルな価格で、誰でも手に入れることができる状態を目指したいです。”
今回の取材を通して感じたのは、石田様が考える住宅は“人の暮らしに密接する存在”であり、生きていくための要素の1つであるということ。またそれは、建築家のフランク・ロイド・ライトが「どこにも大仰なところのない、住むための場所である」*¹と称し、技術的工夫と建設技法の単純化によってコストを削減することで、資金が限られていても各々の目的に叶った住まいを実現可能にした〈ユーソニアン住宅〉を彷彿とさせました。
“素材もデザインも大切に。30年後も価値の変わらない住まいを。”という指針が体現された石田邸。1930年代から現代にいたるまで大切に住み継がれるユーソニアン住宅のように、住宅の本質を追求しつづける石田様が手がける住まいは、長く愛される存在となっていくのではないでしょうか。
独立直後のお忙しい中、快く取材に応じてくださったSO DESIGNの石田様、本当にありがとうございました。
*¹書籍『自然の家』(著:フランク・ロイド・ライト / 訳:冨岡義人)より参照
Photo:SO DESIGN株式会社様
Text:yano
設計施工
SO DESIGN株式会社
https://www.instagram.com/so__design__/
弊社納材商品
UNILUX IsoPlus
北海道産ナラ節無フローリング 厚み15㎜×巾120㎜×乱尺
北海道産タモ節無パネリング 厚み8㎜×巾105㎜×乱尺
アッシュ巾ハギフリーボード 厚み30㎜×巾600㎜×長さ3,030㎜
オークフローリング ラスティックグレード 厚み15㎜×巾120㎜×長さ1,820㎜